コラム
育成就労制度
人手不足技能実習はじめに
2024年9月に外国人材の新たな制度である「育成就労」が閣議決定され、9月30日の官報で改正入管法及び育成就労法の関係省令等が公布されました。
(2027年4月1日施行予定)これは従来の「技能実習制度」に代わる外国人雇用制度となっています。
以下では新たな育成就労制度について、従来の技能実習制度と比較しながら紹介していきたいと思います。
従来の技能実習制度
制度目的…「国際貢献と人材育成」
従来の技能実習制度は、日本で培われた技能、技術又は知識を発展途上の地域へ受け継ぐことで、当該地域の経済発展に寄与するという「国際貢献」が目的でした。
この目的と趣旨は、創設当初から一貫しており、技能実習法第3条第2項には「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記してあります。
しかし実際は、日本国内の労働人員の補填目的で外国人材が登用されており、本来の目的と実態が乖離している状態にありました。
さらに低賃金の問題や長時間労働の強制、ハラスメントやケガ・事故が多発しており劣悪な労働環境が指摘されていました。
制度内容
従来の技能実習制度の受入れには大きく2つの類型が存在します。
それは「企業単独型」と「団体管理型」の2種です。
「企業単独型」は海外に支店や子会社、関連会社をもつ企業が外国人労働者を受入れる方法です。
「企業単独型」では企業と技能実習生が直接契約を行い、企業内で指導・研修が実施されます。
一方「団体管理型」では、監理団体が受入れ企業と契約を行い、企業は監理団体の作成したプログラムに沿って実習の一部を企業内で実施します。
上記の違いに加えて、企業単独型では技能実習生にも条件があります。
具体的には
①18歳以上であること
②帰国後、実習で得た技術を活用する予定が決まっていること
③母国では当該技術の習得が困難であること
④海外拠点から転勤・出向する者
⑤保険金や違約金の徴収がない等の主に5つが挙げられます。
そのため、技能実習生の約9割は、「団体管理型」を利用しているのが現状です。
技能実習制度の区分
技能実習制度は大きく3つに区分されており、それぞれ第1号技能実習、第2号技能実習、第3号技能実習となっており、移行を希望する場合は特定の試験に合格することが必要とされています。
(各区分の詳細については以下の図を参照してください。)
また対象職種については省令で定められている他、介護・自動車整備・漁船漁業職種等は別途要件が設けられています。
さらに就労開始時の日本語能力の基準について、明確な基準は原則存在しないとされています(介護職のみ日本語能力試験N4が必要)。
在留期間については、技能実習制度の場合、最長5年とされており、転籍については原則不可となっています。
第1号技能実習…入国後1年目の技能等を修得する
第2号技能実習…2,3年目の技能等を習熟
第3号技能実習…4,5年目の技能等を熟達
以上が従来の技能実習制度についての説明になります。次に以下では、新制度である「育成就労制度」について説明したいと思います。
新設育成就労制度
制度の目的…「日本国内の人手不足における人材の育成・確保」
育成就労制度では、先に述べた技能実習制度運用の実態と理念の乖離を是正し、外国人材を制度的に受け入れる仕組みを改めようという動きにより新設された制度で、主な目的は国内労働人員の補填です。
そして、この育成就労制度は、ただ労働力を補填するためだけでなく、人材育成を通じて技能水準を向上させ、かつ長期的に人材を確保することを目指しています。
制度内容
新制度では約3年の育成期間を経て、「特定技能1号相当」の人材を育成することが予定されています。
受入れ可能職種については、90職種であった技能実習制度に比べて特定技能と同じ職種(16分野、以下詳細)に限定されます。
また転籍については技能実習制度が原則不可であったことに対し、同一企業で1年以上の就労もしくは、やむを得ない事情がある場合本人の意向により可能となっています。
この「やむを得ない事情」についても従来の制度よりも認定基準が緩和される予定になっています。(ただし、転籍先の職種が従前と異なる場合は原則不可であり、さらに転籍先事業所の適正性についても審査が実施される。)
特定技能への移行について、新制度では移行分野と職種が一致し、なおかつ試験に合格すれば可能となっています。
さらに日本語能力については、就労開始時までに日本語能力A1相当以上の試験の合格、もしくはそれに相当する日本語講習の受講が必要という基準が設けられました。
育成就労制度の対象分野
16分野
介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・船用工業、自動車調整、航空、宿泊、農業(農業全般可に変更)、漁業、飲食料品製造業、外食業、鉄道、林業、木材産業、自動車運送業
監理団体
非営利監理団体の名称は「監理支援機関」に変更され、育成就労制度の新たな要件に則った許可申請が必要となります。
具体的には職員の配置や財政基盤、相談対応の体制等が適切に確保されていることが求められ、これは悪質な管理団体による不当な労働条件や過酷な環境に苦しむ実習生を減らし、実習生の権利と安全が守られることを目的としています。
育成就労制度の問題点
以上のように、新たな「育成就労制度」では安全な環境下で適切なサポートを受けながら働くことができるなど、非常に労働者(外国人材)に親和的な制度設計となっています。
一方で使用者側にとっては以下のような新たな課題が考えられ、対策を講じることが求められます。
① 関連費用の増大→これまで外国人材側が負担していた費用(渡航関連、手数料、研修費用、日本語等の教育支援費用など)の多くが企業側の負担となることから、採用コストが増大することが見込まれています。(現時点では1人あたり、年間約50~100万円の費用増予定)
② 受入れ可能職種の減少→スーパーの総菜製造やパン・菓子製造、印刷業や縫製業が除外されることになり、右対象産業の人手不足が懸念されています。(特に地方の中小企業)
③ 人材流出のリスク→これまでに比べて転籍しやすくなることから、給与水準が相対的に低い企業やキャリアアップの機会が制限されている企業などから人材が流れ、結果として労働不足の補填という本来の制度目的が達成されない企業も出てくると考えられています。(企業の「働く環境整備力」が重要)
おわりに
以上、今回は新たな「育成就労制度」について、制度目的や内容の観点から紹介を行いました。従来の技能実習制度とは目的から大きく異なり、それに伴い制度内容にも多くの変更点が見られました。新しい制度は、労働者側にとっては非常に親和的である一方、企業側にとっては、費用を含めて高い「働く環境整備力」が求められることになり、一部の企業に制度の恩恵が集中してしまう可能性もあるのではないかと考えます。
したがって今後は、制度の具体内容や運用ルールについて変更される可能性が残されているため、今後の動向を見守りたいと思います。
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