コラム
二重国籍―日本国籍の母親とアメリカ国籍の父親の事例
外国人法改正日本国籍の母親とアメリカ国籍の父親の間に子どもが産まれた場合、その子どもの国籍はどのような取り扱いになるのでしょうか。
(1)子どもが日本で産まれた場合
① 日本国籍―嫡出子
子どもが産まれた際に、父親または母親が日本国民であれば、その子どもは日本国籍を取得します(国籍法2条1号)。今回の事例では、母親が日本人であるため、子どもは日本国籍を取得することができます。
② 日本国籍―非嫡出子
非嫡出子の場合であっても、母親と子どもの親子関係は分娩の事実により当然に生じますので、子どもが産まれた際に母親が日本国民であれば、その子どもは日本国籍を取得します。
③ アメリカ国籍―嫡出子
1986年11月14日以降に日本で産まれた場合、子どもが産まれる前にアメリカ人の親(本件であれば父親)が、アメリカまたはアメリカ領土のいずれかの場所に合計で5年以上(5年間のうち2年間は14歳以降)居住したことがある場合のみ、子どもは、アメリカ国籍を取得できます(1952年12月24日から1986年11月13日の間に生まれた子どもであれば、父親がアメリカまたはアメリカ領土のいずれかの場所に居住していなければならない期間は合計10年以上(10年間のうち5年間は14歳以降))。
④ アメリカ国籍―非嫡出子
子どもが産まれる前にアメリカ人の親(本件であれば父親)が、アメリカ本土(2017年6月12日の前日までに子どもが生まれている場合にはアメリカ領土も含む)における居住期間が5年以上(5年間のうち2年間は14歳以降)の場合にのみ、子どもはアメリカ国籍を取得できます。
(2)子どもがアメリカで産まれた場合
①アメリカ国籍
子どもがアメリカで産まれた場合は、親の国籍に関係なく、子どもはアメリカ国籍を取得します。したがって、本件において、子どもはアメリカ国籍を取得することになります。
②日本国籍
どこで産まれたかに関係なく、父親または母親が日本国籍であれば、子どもも日本国籍を取得します。今回の事例では、母親が日本人であるため、子どもは日本国籍を取得することができます。
ただし、アメリカで子どもを出産し、子どもがアメリカ国籍を取得した場合、日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時から日本国籍を有していないことになります(国籍法12条)。日本の国籍を留保する場合、出生の日から3カ月以内に、日本国大使館、総領事館または本籍地の市区町村担当窓口に、出生の届出と国籍留保の届出を届け出る必要があります(戸籍法104条1項)。
(3)二重国籍の取り扱い(国籍の選択)
①日本での取り扱い
日本では、子どもが産まれたときに二重国籍となった場合、20歳になるまでに国籍の選択をしなければならないと規定されています(国籍法14条1項)。日本国籍を選択する場合、外国の国籍を離脱することによるほかは、日本国籍を選択かつ外国国籍を放棄する旨の選択の宣言を届け出ることにより行います(国籍法14条2項、戸籍法104条の2)。もっとも、選択の宣言をした日本国民が外国国籍を離脱することは努力義務とされているため(国籍法16条1項)、罰則はありません。したがって、日本の法律は二重国籍を黙認していると言われています。一方、アメリカ国籍を選択する場合には、日本国籍を失い、二重国籍は解消されます(国籍法11条2項)。
②アメリカでの取り扱い
アメリカでは、最高裁判所が二重国籍を法律上認められている資格であるとしています。また、本件のように出生により二重国籍となったアメリカ人に対して、国籍の選択を迫るような特別な規定は定められていません。したがって、日本国籍を取得し、二重国籍となった場合であっても、アメリカ国籍に何ら影響を及ぼしません。
(4)二重国籍による問題
① 法務大臣による催告
子どもが20歳に達するまでに日本国籍を選択しない場合、法務大臣は国籍の選択をすべきという催告を行うことができます(国籍法15条1項)。この催告を受けた場合、その催告を受けた日から1カ月以内に日本の国籍を選択しなければ、原則として、その期間が経過した時に日本国籍を失ってしまいます。もっとも、この催告は今まで一度も行われたことはありません。
② 不法滞在
二重国籍の場合において、日本に入国する際にアメリカのパスポートを、あるいはアメリカに入国する際に日本のパスポートを用いてしまうと、外国人が滞在するとみなされてしまうため、ビザの発給が必要となります。もしもビザを発給せずに滞在してしまうと、不法滞在と扱われてしまいます。とりわけ日本においては、二重国籍者に対してビザの発給を認めていないため、不法滞在となる可能性が高まります。不法滞在となった場合、日本では収容され、強制的に退去・送還されてしまう可能性があります。また、両国ともに、不法滞在後しばらくの間は入国ができなくなります。
③ パスポート更新における旅券法違反
日本のパスポートを更新する場合、手続きにおいて外国の国籍を有しているかのチェック項目があります。その項目において、二重国籍であるにもかかわらず、外国の国籍を有していないとした場合、虚偽申請になります。かかる虚偽申請を行った場合5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方が科されます(旅券法23条1項1号)。
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